主語 (subject)とは?
「主語」は何かの映画で演じている役者だと思ってください。英語母語話者はほぼ無意識に、文の主語は何かを考えています。映画の役者に例えると、彼らの脳では映画で演技をしている役者が誰なのか、常に注意しています。つまり、英語母語話者の脳の中では、常に「誰が」ということが最初に問題となります。
一方で日本語母語話者の方は、映画の背景はどうなっているのか、どんな状況なのか、そのイメージを思い浮かべながら話しています。映画で何が起きているのか、どんな状況なのかが重視されます。
「非常に緊迫した状況である。」の主語は日本語では考えません。何か緊急な「事態」かもしれないし、プロレスの試合かもしれない。でも主語が何なのか決めません。とにかく報告した人にとって「緊迫した状況」なのでしょう。
次の文の主語はなんでしょうか?
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」(『雪国』川端康成〈1935〉)
トンネルを抜けたのは「列車」で、「列車に乗っている主人公」です。でもどちらなのかは考えません。とにかく、トンネル抜けたら雪の情景があったということのほうを考える。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」(『雪国』川端康成〈1935〉)
トンネルを抜けたのは「列車」で、「列車に乗っている主人公」です。でもどちらなのかは考えません。とにかく、トンネル抜けたら雪の情景があったということのほうを考える。
でも英語は日本語のように表現できず、主語を決めないと文が作れません。
英語の"It"
英語では主語を明示しなければならないので、I/You/He/she/we/theyで表せない状況になると"it"を多用することになります。この"it"は、日本語では、「それ」と訳されることが多いです。でも、"It's sunny"の"it"は何なんでしょうか?「それは晴れ」。何言っているかわかりませんね。日本語の「あ、晴れてる」が"It's sunny"の 意味です。英語の"it"は、厳密に言うと日本語の「それ」という意味に限定されません。英語の場合 "it"は、「まだその素性が何かよく分からないもの」や「主語をはっきりと想定しにくい時の仮の主語」としても使われます。つまり抽象的なものを指しても使われます。「面白い、興味深い」は英語で何て言うでしょうか? "It is interesting." です。「面白い、興味深い」の主語はなんでしょうか?それは目の前で起きていること、今聞いたこと。それを英語では"it"で表さないと文ができない。めんどくさいですね。
英語の主語と三単現の"s"と"am" "is" "are"
I/You/He/she/we/they/it/this/that/those/these/など、英語は「主語」で「主語」を示すことができます。????何言っているの?
当たり前で訳のわからないことを言っているように聞こえるかもしれません。スペイン語など他の言語では、「主語」は何かという情報が動詞の変化形によって示されます。ここでスペイン語を例にあげます。スペイン語は、主語が誰かによって動詞の形が変化します。スペイン語では、動詞の形を見れば「主語は何か」「時制は何か」という情報が得られます。動詞の変化形にこのような情報が盛り込まれているので、あえて主語を明示する必要がありません。スペイン語を話す人達は、主語を明示しない時があります。動詞の形で「誰」が主語なのか分かるからです。
一方で英語は、長い年月の中で、主語の情報を動詞の変化形で示すことをやめてしまった。ところが幾つかの名残だけが残っています。その代表的なものはいわゆる「三単現の "s"」です。英語の先生達が、主語がhe/she/itなのに動詞の"s"が抜けてると言って、テストの点数を×にするあれです。動詞の最後に "s" があれば主語は「三人称単数」で、時制は現在であることが分かります。主語は何かという情報がこの "s" で示されているわけです。
このほかに 「be動詞」の変化にも名残があります。 "am" であれば主語は「一人称単数」の"I"になり、時制は現在になります。
ただし、これはもう名残であって、英語では必ず主語を言うことになっているので、動詞の変化形で主語を示す必要はなくなっています。では何のためにあるのか。意味はないのに。この細かい「三単現の "s"」や「be動詞」の"am" "is" "are"が何で残っているのか?謎です。自分の経験なので勝手ですが、こういった細かい間違いで知的レベルを決めつけたり地位を決めつけてるのではないかと思いはじめてます。
"be"動詞って言っているのに、何で I "am" とかyou "are" とか (he/she/it )の時はisなのか。"We"だと"are"ってしなきゃいけない。"I be," "You be," "He be," "She be"とはならない。その背景に、前述した「英語はスペイン語と違い、長い年月の中で、主語の情報を動詞の変化形で示すことをやめてしまった。」ことがあります。
ただ実際の会話では、英語母語話者が "He are nobody"って言っているのを聞いたことがあります。否定 する時だけ全部be動詞が同じまま、"I ain't nobody. "とか"You ain't nothing." "He ain't nothing" "It ain't nothing" としゃべる人もいます。ただ、ビジネスの場やフォーマルな場ではそういう表現は下品とみなされることもあります。そういうわけではないのですが。"be"動詞については後に解説加えておきます。